機動戦士ガンダムZZ
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GUNDAM FRAG.
鈴木監督・堀口プロデューサーインタビュー
『機動戦士ガンダムZZ』Blu-ray BOX用に、完全新作として制作されたフルCG作品『GUNDAM FRAG.』。宇宙世紀の断片的な記録映像で紡がれた映像集の裏側にはどんな真意が隠されているのか? 発売中のBlu-ray BOX Part.I に収録された前半部分で描かれた映像の意図、そしてPart.II に収録される後半を見終えた後に判ることとは? 監督の鈴木健一氏とプロデューサーを務めた堀口滋氏から、『GUNDAM FRAG.』の見方、映像制作に込められた思いを語ってもらった。

——まずは、『GUNDAM FRAG.』企画の始まりから教えてください。
堀口 『ガンダムZZ』のBlu-ray BOXに収録する何か特別な映像が作れないかとバンダイビジュアルさんからお話しをいただいたのですが、あまり時間的な余裕がなかったので、そんな中で、CGならば過去のCGモデルを活用すれば何か作れるかもしれないという、漠然とした考えが浮かびました。かつて制作した『GUNDAM EVOLVE../』のような、それをもうちょっとライトにまとめられないかと考えたんですね。そこで、打ち合わせの中で、「インターネットにアップされている『YouTube』のような記録映像集みたいなものはどうか?」という案が出まして、それを実現化していった感じですね。
鈴木 世の中には『YouTube』のようにインターネットにアップされた動画がたくさんあると思うのですが、あれを閲覧しているつもりで軽く観て貰えるような作品を想定しています。自分が宇宙世紀の世界に行っていて、その中で映像を検索したものを観ているという感じだと思って貰えれば、入りやすいかもしれないですね。
——『GUNDAM FRAG.』という作品の世界観や舞台となっている時期も含めて、物語の状況を簡単に教えていただけますか?
堀口 状況としては、木星往還船ジュピトリスの中で、ネットワークを使って映像を検索しているという感じですね。ジュピトリスが出ているということで、設定としては『ZZ』のテレビシリーズよりも後の話で、そのあたりは『EVOLVE../10』に通じています。木星への往復をしているジュピトリスの中ということで、年代としては宇宙世紀0091年〜92年くらい。あの時代はレーザー通信をはじめとして、いろいろと技術が進歩しているらしいんですが、コロニーを含めた情報共有のネットワークを構築しているどうかという設定は存在しないので、あくまで誰かがジュピトリスの中にあるアーカイブを見ているということなんです。だから、時代的には0090年よりもちょっと進んでいるかなって感じですよね。
鈴木 映像の方も、宇宙世紀に撮影された映像であることは確かなんですが、本物か偽物か判らないという感じにしています。『YouTube』を観てもらうと判りますけど、実際に起こったことを撮影された動画ばかりではなくて、投稿者によって捏造されたりした動画なんかも入り交じってアップされているじゃないですか。
『GUNDAM FRAG.』も、ジュピトリスのアーカイブからピックアップされた、モビルスーツにまつわる虚実入り交じった動画を連続で観ているという感じなんですね。だから全部の映像が本物ではない可能性があって、もしかしたら宇宙世紀の素人が見聞きしたモビルスーツに関することを、本物のような映像として作ったものも混じっているかもしれない。宇宙世紀では映像技術が発展して、簡単に高いクオリティの映像が作れるようになっているかもしれないですからね。だから、ひとつひとつの動画にオチはないんです。普段、仕事上の映像を作る際は、どうしてもオチをつけたくなってしまうんですが、ネットにアップされている動画は、オチがないこと自体が醍醐味だったりするじゃないですか。そのあたりはすごく悩んで作りましたね。また、再生される動画の順番は演出的な緩急という意図はあって、内容的には意味は特にないです。だから、軽い気持ちで観て貰えるといいかなと思います。
——なるほど。そうしたネットのカオス的な状況をあえて映像にしたということですね。とは言え、映像のセレクトにはそれなりに理由があるんじゃないですか?
堀口 やはり、Blu-ray BOXの特典なので、そのあたりはすごく意識していますね。DVDではなく、Blu-ray BOXの特典ですからね。それこそもしかするとDVD−BOXを買って、さらにBlu-ray BOXも買うほどのファンだったら、何回も『ZZ』を観ていただけていると思うんですよね。そうした人たちが、何回も見るという行為をしたときに、特典である映像にも何か関連を持たせなければならないと考えたんです。だから、いくつかの映像が「短いけど、本編の別カメラの映像」というような投げかけになっていて「これは何話のどのあたりの映像だ」って判るように心がけているんですよ。
 それから、『ZZ』という作品は、演出のノリのせいか、本編以外でもいろいろとハッチャケたことをやっているんですよね。例えば、当時外伝漫画も描かれたりしているんだけど、それは『ZZガンダム対イデオン』的なものだったり、ジュドーが乗っていた以外にZZガンダムが13機量産されて運用されていたというものだったりするんです。また、別の仕事で『ZZ』における、Zガンダムの活躍をリサーチした時に出た結果が、劇中で一番使った攻撃がビーム・ライフルでもビーム・サーベルでもなくて、蹴りだったりするんですよ。
 そうした周辺状況や、富野監督がロボットアクションものとしてハッチャケたことをやりたかったというのも『ZZ』という作品なんだろうなということを受け入れると、もしかしたらその時代の人が遊んで作ったかもしれない映像があったりするような、そういうものもやろうと思いついた結果ですね。
鈴木 映像を観たら、ミリタリー的なガンダムファンからすれば「それは許されない!」って言うかもしれないです。もちろん、超ミリタリー的な要素の強い映像ばかりにすることもできたんですけど、『ZZ』という作品はそれだけではないですからね。だから、リアルっぽい画作りなんだけど、おかしなギャグ的な画もあるというのは心がけて作っています。
 そんな流れの中にある、手持ちのカメラや監視カメラ的な映像の雰囲気が感じ取ってもらえると嬉しいですよね。
堀口 ガザDがスモークで空にバラの絵を描く映像なんかは、象徴的ですよね。最初は機体に乗せているカメラで、煙が尾を引いている映像を映していて、それが最後にバラになるのを観た時に、知らない人からすれば「何だこれ?」って映像だけど、本編を知っている人なら「あのシーンだ」って判るし。
 キュベレイMk-ⅡがZガンダムに乗って大気圏突入する映像も、肩のバインダーが大きくて邪魔だから、ファンネルで攻撃して吹き飛ばすという、理屈として考えるとギリギリのバランスで成立している『ZZ』らしいところだと思うんですよね。それを、全天周モニター用に全身に配置されていた、いくつかのカメラが撮っていたカットとしてみたり。そんな、『ZZ』ファンなら受け入れてくれるだろうという映像がセレクトされているんですよ。
鈴木 今回『ZZ』本編を全話数見なおしたんですが、逆にタイガーバウムの回は絶対にやりたくて、コンテまで描いたんですけどズゴックのCGモデリングデータを持ってなかったので、泣く泣く断念しています。MSVの登場シーンなんかもネタとしては面白いんですが、折り合いが付かなくて諦めた映像もたくさんありますね。
——『ZZ』以前の作品の映像も入っていますが、それらも意図的に入れているんですか?
堀口 まずは『ZZ』本編と絡んだシーンを再現できるものを優先的に考えているんですが、それだけだと世界観が狭まってしまう。そこで、次に我々が過去の作品などで使用するために作ったCGモデルであり得る話、シチュエーションを考えたんです。それは、アイデアの面白さと、元ネタとの融合ですね。例えば、雪の中の千歳空港に自衛隊機が駐機している写真があるんですが、雪の中なら背景が誤魔化せて、かつ色や彩度が飛んでしまっているという状況がヒントになって、雪の中にモビルスーツが立っているような状況を考えたり……という感じですよね。
——最初は映像が羅列された、『GUNDAM FRAG.』の世界観に入り込み難いかもしれないですが、それこそ『YouTube』の映像のように何度も観ているうちに、いろいろと気付いてくるところが多い作品かもしれないですね。
鈴木 実は、映像のタイトルがわざとスペルを間違えていたり、モビルスーツの名前が間違っていたりするものもあるんですよ。そのあたりは、何度か観ているうちに新たに発見できる要素かもしれないです。
堀口 例えば、青の部隊のゲルググが出てくる映像のタイトルが「ドム」と間違ったものになっているのは、実はわざとそうしていたりするんですよ。一年戦争のかなり末期にゲルググが導入されてから、『ZZ』の舞台は8年経った世界。ドムはいろんな場所で使われていたから、見たことがある人は多いかもしれないけど、地上で使われていたゲルググってすごく数が少ないかもしれない。そうすると、ほとんどの人が戦闘機の見分けがつかないのと一緒で、映像を観てドムと間違えているんじゃないかという。
鈴木 ネットにアップされている映像は、単語だけだったりするものもあるし、英語にもあまりこだわってなかったりもするので、そういうノリで作っている部分もあります。
——そうした、何度も見直すと発見できる要素も多いということなんですね。
では、間もなくBlu-ray BOXのPart.II が発売されるわけですが、収録されている『GUNDAM FRAG.』後編の見所を教えてください。
鈴木 あえて言うなら、アイキャッチのこだわりですかね。
堀口 『ZZ』では、なぜかアイキャッチが最後までZガンダムだったんですよね。だから、今回は新しくCGでZZガンダムを使ったアイキャッチを作っているんです。
鈴木 アイキャッチもAパートが終わったあとに流れるAパターンと、Bパートの前に出るBパターンがあるので、画は同じでもエフェクトなんかのタイミングが違うので、微妙な違いまで再現したアイキャッチになっていますよ。
 それから、後編はZZガンダムがメインになっている映像が多いのもポイントですね。
堀口 理由は、Part.I は買っても、Part.II は買わないというファンがいる中で、Part.II を買っていただけるのは本物のファンだと思うんですよ。そういう人たちに向けて『ZZ』の魅力を短い映像の中で出せないかというのと……。
鈴木 モデリングデータが前半に間に合わなかったのも大きいですね(笑)。Gフォートレスのモデリングデータはさすがになかったので、ゼロから作っていたと言うこともあって、前半に収録できなかったんです。
堀口 あと、後半に入る映像の方では、なるべくZZガンダムのMSとしての重厚な雰囲気や微動だにしない感じという個性を出そうとすると、ちょっと複雑なアニメーションをしなくてはいけなかったりするので、そうした時間がかかる部分は後半にまわってしまったんです。でも、そういうこだわりの部分も見て欲しいですよね。
——最後に『GUNDAM FRAG.』をより楽しもうとしているファンにひと言お願いします。
鈴木 全体的にお話がない映像なので、見方は難しいかもしれませんが、後半まで観て貰えれば、最後にオチのようなものも用意していますので、あまり深く考えず、構えずに観て貰えればと思います。ネットにアップされている映像を、見る感じで、軽い気持ちで観て頂けたら、そんな感じですよね。
 例えば『YouTube』の映像で、「UFO」と検索するとたくさんのUFO映像がでてきますよね。その映像はすごく本物っぽいものから、あきらかにヘッポコなUFOまであるじゃないですか。そうしたバリエーションの中で、「これは面白い!」とか「これはいいや」と取捨選択していく感じが、楽しみ方だと思います。
 スタッフも、これらの映像が宇宙世紀で本当にあったかどうかを優先するよりも、観ている人が想像を膨らまして楽しめる映像を作りたいなと心がけたので、ゆる〜い心づもりで、パソコンのモニターで疑似宇宙世紀の映像検索をしている気分で観て貰えればと思います。

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